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徳島地方裁判所 昭和54年(わ)279号 判決

本店所在地

徳島県那賀郡木頭村大字和無田字イバコ二四番地

株式会社 小野組

右代表者代表取締役

小野正長

本籍並びに住居

徳島県那賀郡木頭村大字和無田字イバコ二四番地

会社役員

小野正長

昭和八年七月九日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官秋本譲二出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告会社を罰金一、六〇〇万円に、被告人小野正長を懲役一〇月に処する。

但し、被告人小野正長に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社小野組は、徳島県那賀郡木頭村大字和無田字イバコ二四番地に本店を置き、土木建設工事の請負及び生コンクリートの製造販売等を事業目的とする株式会社であり、被告人小野正長は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括管理しているものであるが、被告人小野正長は被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、

第一  昭和五〇年七月一日から昭和五一年六月三〇日までの事業年度において、被告会社における真実の所得金額は二、七二四万五、八〇五円で、これに対する法人税額が九九七万八、一〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上未成工事支出金を完成工事原価と仮装し、或は架空の工事原価を計上するなどの不正の方法により所得の一部を秘匿したうえ、昭和五一年八月三一日阿南市富岡町滝の下四番地の四阿南税務署において、同税務署長に対し、所得金額は三三四万三、一一六円で、これに対する法人税額が八五万六、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税額九一二万一、九〇〇円を免れ

第二  昭和五一年七月一から昭和五二年六月三〇日までの事業年度において、被告会社における真実の所得金額は二、六五〇万六、八五五円で、これに対する法人税額が九六四万〇、六〇〇円であるのにかかわらず、前同様の方法により所得の一部を秘匿したうえ、昭和五二年八月三一日前記阿南税務署において、同税務署長に対し、所得金額は三五二万九、一六四円で、これに対する法人税額が八六万六、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税額八七七万四、三〇〇円を免れ

第三  昭和五二年七月一日から昭和五三年六月三〇日までの事業年度において、被告会社における真実の所得金額は一億三、八六九万七、二八四円で、これに対する法人税額が五、四二四万五、五〇〇円であるのにかかわらず、前同様の方法により所得の一部を秘匿したうえ、昭和五三年八月三一日前記阿南税務署において、同税務署長に対し、所得金額は九一一万五、七五〇円で、これに対する法人税額が二四七万〇、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税額五、一七七万五、四〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告会社代表者兼被告人小野正長の当公判廷における供述

一  被告人小野正長の検察官に対する供述調書

一  被告人小野正長の大蔵事務官に対する質問てん末書九通

一  谷芳明の検察官に対する供述調書

一  谷芳明(一二通)、尾道厚義、西郵局(二通)、阿地カオル、久保蝶子、株田玄治、中橋達夫、福井良夫、南山楠市、中橋愛子、平幾乃、中川幸則、中村持、田村漠美、岡内モトへ、曾根作太、向井為人及び小野ヤスエ(二通)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  中山登作成の申述書

一  大蔵事務官吉井健一作成の現金、預金証書、印鑑等の確認書

一  大蔵事務官三木茂美作成の出資証券確認書

一  大蔵事務官徳永陽三作成の現金、預貯金等確認書

一  大蔵事務官長田金夫作成の自動継続定期貯金確認書

一  大蔵事務官浜喜久夫作成の簿外所得調査書、除外工事収入等調査書、工事原価等調査書、架空計上原価調査書、減価償却費調査書、原価配分調整表、生コン砂利原価計算調査書、生コン生産量調査書、砂バラス売上調査書、役員報酬調査書、経費調査書、受取利息調査書、借入金支払利息調査、未納事業税調査書、簿外現金調査書、未成工事支出金調査書、売掛金(未収入金)調査書、前払金調査書、機械装置調査書、未払金調査書、未成工事受入金調査書、仮受金調査書、繰越金調査書

一  大蔵事務官田中広海作成の預金同利息調査書、仮払金未払金調査書、個人収支調査書

一  西郵局、小野増広及び小野増敏作成の各上申書

一  被告会社代表取締役小野正長作成名義の上申書五通

一  新田竜太郎(四通)、泉寛治(二通)、昇清志、諏訪博、斉藤計六、大黒豊幸、斉藤義郎(三通)、原進、滝川興樹(二通)、小野ヤスエ及び大沢サカノ作成の各証明書

一  中山登作成の村工事発注証明書

一  西田勇二作成の村民税納付額証明書二通及び固定資産税納付額証明書

一  南場勝幸、松本利吉、真柴徳、宮崎了(二通)、赤松恭宏(二通)、岡田昌治及び長谷川高男作成の各取引内容照会に対する回答書

一  長屋幹弘、黒木宏及び昇清志作成の各保険契約の内容及び払込保険料金額照会に対する回答書

一  佐藤武弘及び野々宮恒久作成の各不動産取得税の納付状況照会に対する回答書

一  岡川清作成の町税の納付状況照会に対する回答書

一  長谷勝美作成の申告所得税の納付状況照会に対する回答書及び税の納付状況照会に対する回答書

一  山本潤造作成の固定資産税納付状況照会に対する回答書

一  藤原栄二及び岡田烝助作成の各株式の異動及び支払配当金額照会に対する回答書

一  徳島地方法務局上那賀出張所登記官作成の商業登記簿謄本

一  検察事務官作成の電話聴取書

一  押収してある総勘定元帳四綴(昭和五四年押第九三号の一)、振替伝票綴四綴(同号の二)、請負工事台帳四綴(同号の三)、請求書綴二〇綴(同号の四)、領収書綴一一綴(同号の五)、固定資産台帳一綴(同号の六)、手形受払帳二綴(同号の七)、給料台帳三綴(同号の八)、請求書綴一綴(同号の九)、出勤簿兼作業の日誌一〇綴(同号の一〇)、封入出勤簿兼作業日誌六袋(同号の一一)、仕訳簿一綴(同号の一二)、領収書二綴(同号の一三)、請求書二綴(同号の一四)、請求書四綴(同号の一五)、封入生コン骨材支出明細一袋(同号の一六)、決算関係書類綴一綴(同号の一七)、工事原価関係書綴一綴(同号の一八)、出荷実績表綴三綴(同号の一九)、封入登記済権利証一袋(同号の二〇)、封入領収証一袋(同号の二一)、法人税決議書一綴(同号の二二)、事業所得調査書綴一綴(同号の二三)工事関係収支書一綴(同号の二四)

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官浜喜久夫作成の脱税額計算書-欄外に(自昭和五〇年七月一日 至昭和五一年六月三〇日)の記載のあるもの-

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官浜喜久夫作成の脱税額計算書-欄外に(自昭和五一年七月一日 至昭和五二年六月三〇日)の記載のあるもの-

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官浜喜久作成の脱税額計算書-欄外に(自昭和五二年七月一日 至昭和五三年六月三〇日)の記載のあるもの-

(法令の適用)

被告会社の判示各所為は各法人税法第一六四条第一項、第一五九条第一項に該当するところ、いずれの罪についてもその免れた法人税の額が五〇〇万円をこえるので情状により同法第一五九条第二項を適用し、以上は刑法第四五条前段の併合罪なので、同法第四八条第二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金一、六〇〇万円に処し、被告人小野正長の判示各所為は各法人税法第一五九条第一項に該当するところ、いずれの罪についてもその免れた法人税の額が五〇〇万円をこえるので情状により同条第二項を適用し、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪なので、同法第四七条本文、第一〇条により犯情の最も重いと認める判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一〇月に処し、情状により同法第二五条第一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右の刑の執行を猶予することとする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 安藝保壽)

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